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ロシアのクリミア侵攻は「ヒトラーのズデーテン侵攻」の繰り返し!?<現代ビジネス 2014年03月>

現代ビジネス
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ロシアのクリミア侵攻は「ヒトラーのズデーテン侵攻」の繰り返し!? 国連が機能しない"規律なき世界"はどこへ向かうのか
 2014年03月06日(木) 長谷川 幸洋
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38577
▼全文転載

ウクライナ情勢が緊迫している。英国のヘイグ外相は「欧州における21世紀最大の危機」と言ったが、これでもまだ控えめな表現かもしれない。すでに、世界では「新たな冷戦の始まり」という評価が飛び交っている。私も以下の理由から、それに同意する。

 

国連という枠組みの限界をさらけ出した初めての事態

 

まず、これは単なる一過性の危機ではない。世界秩序を支える根幹のレジーム(枠組み)が揺らいでいる。

ウクライナに対するロシアの軍事侵攻は、実際の戦火を交えていないとはいえ、1945年以降、国連を中心に形成してきた世界秩序へのあからさまな挑戦である。しかも、主役が国連安全保障理事会の常任理事国である点が決定的に重要だ。

 

米国や北大西洋条約機構NATO)はすでに対応策から軍事的選択肢を除いているが、それは単に「大国のロシアと一戦を交えたくないから」とか 「戦っても勝てないから」といった理由からではない。国連安保理で武力制裁のお墨付きを得られる見通しが立たないのだ。なぜかといえば、当のロシアが常任 理事国なので、拒否権を発動するに決まっているからだ。

 

ロシアが拒否権を発動したのに、米国や西欧諸国が安保理決議なしに無理矢理、武力介入に動けば、今度は米国や西欧諸国が国連憲章違反になってしま う。ロシアの行為が国際法違反なのは明白なのだが、それを正そうと欧米が安保理決議なしに武力対応すると、正そうとした行為自体が違反になる。いわば「法 的強制力のトラップ(わな)」にはまったと言ってもいい。

 

したがって、ウクライナがいくら国連でロシアの非を責め立てたところで、欧米は支持するだろうが、国連全体としては、基本的にどうすることもできない。つまり国連は事実上、機能しない。今回の事態はそんな国連という枠組みの限界、あるいは無力化をさらけ出してしまった。

 

そこがたとえば、クウェートに侵攻したイラクの場合とまったく意味合いが異なる点だ。イラクの場合は、国連は曲がりなりにも機能して安保理決議に基 づく多国籍軍を形成した。だから国際社会は正当性を持った強制力を行使できた。ところが今回はそれができないのだ。こうした事態がこれほど鮮明に表面化し たのは初めてのことではないだろうか。

 

クリミア占領は長期化し世界は「新たな冷戦」状態に入る

 

次に、危機という点でみれば、これまでも戦後世界は1950年の朝鮮戦争、62年のキューバ危機、60年代のベトナム戦争と大きな危機を経験してき た。しかし、互いに衰えたとはいえ、米国+西欧vsロシアという旧東西ブロックの主役同士が正面からガチンコで対決する構図になったのは、今回が初めてで ある。

 

キューバ危機では、ソ連が土壇場でミサイルを積んだ船団をUターンさせて、危機を乗り越えた。だが、今回は危機からの出口を当分、見い出せそうにない。

なぜかといえば、欧米は軍事的選択肢がとれないから、対応策は経済制裁くらいしか残されていないからだ。それではロシアをクリミア半島から撤退させるに は、まったく力不足である。ロシアにとってクリミア半島は軍事的要所であるだけでなく、そこに点在する軍事と宇宙関連技術拠点は絶対に手放したくない。結 局、ロシアのクリミア占領は既成事実となって長期化するだろう。

 

そうなると、後に残るのは何か。危機からの出口を見い出すどころか、危機が定常状態になる。つまり、にらみ合いがいつまでも続く。だからこそ「新たな冷戦」状態に入る。戦火は交えなくても、戦っているのだ。

 

新たな冷戦が始まった世界は、これまでとは原理的に違った世界になる可能性が高い。

 

戦後世界は国連憲章で「武力の威嚇または行使によって国家の主権と領土を脅かす」のを禁じたところを原点として出発した。ところが、今回のロシアの行為は、まさしく武力の威嚇によって主権と領土を脅かしている。

 

ロシアは国連の枠組みを守るどころか、ぶち壊したと言ってもいい。米国のケリー国務長官は主要国首脳会議(G8)からロシアを追放する可能性に言及 している。一部には「話し合いの枠組みがなくなってしまう」という懸念もあるようだが、G8の話し合いが成立するとしても、ロシアはこれまでの国連の精神 を前提にしないと考えるべきだ。相手は違った土俵で相撲をとる覚悟なのだ。つまり世界は変わってしまった。

 

ヒトラーによるズデーテン侵攻になぞらえる声も

 

いったい、どうしてこんな事態になってしまったのか。これは突然、訪れた危機ではない。ロシアと中国は世界の反応を試すようにして、じわじわと少しずつ規律と秩序を侵食してきた。

 

ロシアで言えば、2008年のグルジア戦争がきっかけになった。グルジアが非政府支配地域の南オセチアを攻撃したことを受けて、ロシアが軍事侵攻し結局、南オセチアと(同じような状態だった)アブハジアが事実上、ロシアの占領地域になって現在に至っている。

 

昨年9月のシリアをめぐる出来事も導火線になった。シリアのアサド大統領が化学兵器を使用して多くの住民が死亡した。オバマ大統領はシリアを空爆する方針を表明したが、土壇場でプーチン大統領化学兵器の共同管理を提案して、オバマはこれを受け入れてしまった。

 

このときブレた米国の弱腰が今回、プーチンに見透かされていたのは間違いない。

 

一方、米国が1995年の米比合同軍事演習を最後にフィリピンから撤退すると、中国は南シナ海実効支配に乗り出した。まず南沙諸島ミスチーフ礁 に建造物を構築し、2012年からはスカボロー礁にも手を伸ばす。同礁には昨年、中国がコンクリートブロックを設置したことが確認されている。さらに今年 1月には、南シナ海で操業する外国漁船は中国の許可が必要という規制も発表している。

 

中国のふるまいについて、フィリピンのアキノ大統領は2月、米ニューヨーク・タイムズで中国をナチス・ドイツのヒトラーになぞらえて「世界はヒトラーをなだめるために(チェコスロバキアの)ズデーテン地方を(ドイツに)割譲した史実を思い出す必要がある」と訴えた。

 

ヒトラーは1938年にズデーテンに侵攻した。それを当時のチェンバレン英首相は容認してしまった。増長したヒトラーが翌年、ポーランドに侵攻し、 第二次世界大戦に至った。最初の甘い対応が後に大きな悲劇を招いたのである。これは「チェンバレンの宥和政策」として歴史と国際関係論の教訓になってい る。

 

今回のロシアの行動についても、まったく同様にヒトラーによるズデーテン侵攻になぞらえる声がある。もしも世界がロシアのクリミア占領を容認するなら「やがて、もっと大きな悲劇を招く」という懸念である。

 

ロシアは中国の南シナ海での行動を見ていたはずだ。南シナ海とシリアの対応をじっと見て、プーチンは「これならできる」と踏んだかもしれない。

 

集団的自衛権に基づく集団防衛体制の役割とは

 

ロシアの違法行為が既成事実化すると、世界にどんなインパクトをもたらすだろうか。

 

すぐ頭に浮かぶのは、やはり中国である。中国はいまロシアの挑戦が成功するかどうか、しっかり目を凝らして見つめているに違いない。ロシアの軍事侵 攻に対して、欧米が実質的にたいしたこともできず歯噛みするだけなら、「それならオレも」とばかりに中国が尖閣諸島に両手を伸ばす誘惑に駆られたとして も、おかしくはない。

 

これまでは曲がりなりにも米国が乱暴狼藉を働く悪漢に規律を守らせる「世界の警察官」役を引き受けてきた。だが、米国にはもはやそんな余力はなく、軍事予算も体制も縮小している。悪漢が堂々と居直れるとなれば、もはや世界の規律は維持するのが難しくなる。

 

これからは「規律なき世界」になる。少なくとも規律が弱まるのは間違いない。もしそうだとすると、これは欧州における21世紀最大の危機どころか「戦後世界で最大の危機」と言ってもいいだろう。

 

日本にとって教訓もある。それはもちろん、中国が尖閣諸島への威嚇を強める中で、どう領土を保全し、国の平和と安定を確保するかという問題だ。

 

ウクライナのヤツェニュク新首相は指名後に「ウクライナの未来は欧州にあり、ウクライナはEU加盟をめざす」と演説した。新政権は欧州連合(EU) の加盟を目指し、その先にはNATO加盟も視野に入れていた。NATOの集団防衛体制の中に入ることによって、国の安全を守ろうとしたのだ。それがロシア には許せなかった。

 

もしもウクライナがEUとNATOに加盟してしまえば、軍事的要所と軍事宇宙産業を失うだけでなく、もはやロシアにとって簡単に手が出せる土地ではなくなってしまうからだ。

 

逆に言えば、EUとその先にあるNATOの集団防衛体制こそがウクライナの死命を制する鍵になったはずだ。集団的自衛権に基づくNATOとワルシャ ワ条約機構(WTO)の集団防衛体制は国連発足後の冷戦下でも、しっかり機能して大国同士の戦いを防止する役割を果たした。「冷たい平和」と呼ばれる時代 である。

 

世界はこれから国連が事実上、機能しない「新たな冷戦」に突入する可能性が高い。そうだとすれば、集団的自衛権に基づく集団防衛体制の役割につい て、日本もアジア太平洋を視野にしっかり考えるべきだ。当面はすでにある日米安保条約に基づく日米同盟をどう強化するか、である。

(文中敬称略)

 

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